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タイの教育制度

(1)教育行政制度

タイの教育制度は,我が国の制度と同じく,6-3-3-4制であり,初等教育6年間と前期中等教育3年間を義務教育としている。また,初等教育と中等教育の12年間を「基礎教育」と位置付けている。

中央の教育行政は教育省が担っており,初等教育と中等教育は基礎教育委員会事務所(OBEC)が管轄している。地方には,OBECの出先機関として地方教育地区事務所が置かれている。2019年現在,初等教育地区事務所が183か所,中等教育地区事務所が42か所設置され,それぞれの地区の学校を管轄している。つまり,タイの公立学校の大半は教育省が直轄する国立学校である。OBEC以外の教育省管轄学校には,職業教育委員会事務所(OVEC)が管轄する職業学校(後期中等教育),高等教育委員会事務所(OHEC)が管轄する大学附属校,私立教育委員会事務所(OPEC)が管轄する私立学校などがある。

一方で,バンコクの初等学校の大半は内務省(バンコク都教育局)が管轄している。ごく少数ではあるが地方自治体が管轄する学校があったりする。それに加えて,国家仏教事務所(NOB)が管轄する仏教学校(中等教育・男子のみ),国境警察が管轄する学校,その他省庁が管轄する学校やノンフォーマルおよびインフォーマル教育による学校などが存在しており,タイの教育行政制度をとっている。

(2)学校制度

教育省のOBECが管轄する学校を中心に,タイの学校制度を教育段階別に概観する。

就学前教育は主に,①幼稚園(ロンリアンアヌバーン),②就学前学級(チャンデックレック),③幼児発達センター(スンパッタナーデックレック)の3種類に分けられる。幼稚園は,初等学校入学前の2~3年を対象としている。国立幼稚園は2年間,私立幼稚園は3年間の教育課程を持っていることが多い。就学前学級は,初等学校入学前の1年を対象として初等学校に入るための準備教育を実施している。地方に多く所在し,初等学校に併設されている。幼児発達センターは,2歳半から6歳までの子どもを対象としている。幼稚園や就学前学校は教育省が管轄しており,幼児発達センターは内務省や文化省など教育省以外の省庁が管轄している。

初等教育は,6歳入学で6年間の就学期間がある。タイの学年暦は通常5月から始まり、2学期制をとっている。月曜日から金曜日までの週5日制である。初等教育は、タイ語でプラトムスクサーと言い,学年はこの頭文字をとってP1(ポーヌン)からP6(ポーホック)で表される。

中等教育は,前期中等教育課程の3年間と後期中等教育課程の3年間の計6年間であるが,中等学校は,前期中等教育課程と後期中等教育課程を併せ持った6年間一貫教育を行うことが一般的である。教育省は1992年に前期中等教育まで義務教育とした際に,中等学校不足の問題に直面した。そこで,初等学校に前期中等教育課程を併設した機会拡張学校(ロンリアンカヤイオーカット)を設置した。現在でも地方農村部を中心に機会拡張学校に通っている生徒が多くいる。後期中等教育は,普通教育を行う後期中等学校と職業教育を行う後期中等職業学校に分かれる。中等教育は,タイ語でマタヨムスクサーと言い,学年はM1(モーヌン)からM6(モーホック)で表される。日本の高校1年生に該当する学年はM4(モーシー)、つまり中等4年生と呼ばれる。

高等教育は,大学(マハーウィッタヤーライ)やカレッジ(ウィッタヤーライ)で行われており,4~6年の学士課程や2~3年の準学士課程が置かれている。学士課程(パリンヤトゥリー)修了者を対象に,2年間の修士課程(パリンヤトー)、その上に博士課程(パリンヤエック)が置かれている。

▲タイの初等学校の様子(休み時間)

《出典》植田啓嗣(2020)「タイ王国」『海外教科書調査研究報告書』公益財団法人教科書研究センター,pp.103-104。

【参考文献】

鈴木康郎(2006)「タイ:グローバル化時代における伝統文化の保持と揺れる学力観」,池田充裕・山田千秋編『アジアの就学前教育:幼児教育の制度・カリキュラム・実践』明石書店,pp.106-131(第5章)。

平田利文(2014)「タイ:グローバル化時代を生き抜く人材の育成」,二宮皓編『新版 世界の学校:教育制度から日常の学校風景まで』学事出版,pp.204-213(第20章)。

村田翼夫(2007)『タイにおける教育発展:国民統合・文化・国際協力』東信堂。

文部科学省(2017)『世界の学校体系』ぎょうせい。

Gerald W. Fry (edit)(2018)Education in Thailand: An old elephant in search of a new mahout, Springer.